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津家庭裁判所四日市支部 昭和60年(家)301号 審判

申立人 西田高子こと 金容順

相手方 洪東明

未成年者 西田春子こと 洪春子

主文

未成年者の親権者を申立人と定める。

理由

1  申立人の申立の趣旨は主文と同旨であり、申立の実情は、

申立人は相手方ともと夫婦であつたところ、昭和48年11月26日相手方と協議離婚した。そののち同年12月10日、申立人は未成年者を分娩し、爾来同人を監護養育してきた。他方、相手方は昭和49年ころから行方不明となつているため、相手方との間に未成年者の親権者を定めるための協議ができないので、本申立に及んだ。

というのである。

2  一件記録、殊に家庭裁判所調査官作成の調査報告書によれば、申立の実情どおりの事実が認められるほか、以下の事実、即ち、

(1)  申立人は昭和48年のはじめころ西田清治と交際を開始し、同年夏ころ同棲、翌49年5月28日同人と正式に婚姻した。

(2)  未成年者は申立人と西田清治夫婦の子供として肩書住所地で生活しており、申立人や西田清治、婚姻後出生した両名の間の長女、長男との間に不適応行動は窺われない。

ことが認められる。

3  ところで、法例20条によると本件の準拠法は韓国法となるが、未成年者は申立人と相手方の離婚後に出生した子であるものの、韓国民法によれば、婚姻解消の日から300日以内に出生した婚姻中の夫の子として相手方の単独親権に服するものとも解される(同法844条1、2項、909条5項参照)から、かくては我が国の公の秩序又は善良の風俗に反する結果を招来する。そこで、本件においては、法例30条に則り、準拠法である韓国民法の適用を排除し、わが国民法819条を適用すべきである。

4  しかして、本件は、子の出生前に父母が離婚した場合に該当するから、民法819条3項本文によれば、当然母である申立人が親権を行なうこととなるが、申立人において相手方が所在不明で協議ができないことを理由に親権者指定の審判を求めていることでもあり、本件のように申立人、相手方とも外国人の場合は、特に将来の紛糾を未然に防止するためにも、審判主文中で、申立人を未成年者の親権者に指定する旨申立人が親権者であることを闡明するのが相当である。

よつて、主文のとおり審判する。

(家事審判官 油田弘佑)

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